死因贈与と遺贈

司法書士のもみきです!
6月下旬に『遺言・相続相談の窓』という相続関連業務に特化したサイトを起ち上げましたが、HPからのお問い合わせを含め、少しずつ相続関連業務の割合が増えつつある状況です。
そんな中、具体的に受託するには至りませんでしたが、「死因贈与」について考える機会がありましたので、ご紹介させていただきます。
「死因贈与」とは、贈与者が死亡することにより効力を生じる贈与のことで、民法上、「遺贈」に関する規定を準用することとされております。
「遺贈」とは、遺言によって遺言者の財産の全部又は一部を無償で与えることをいいますので、ある人が亡くなることによって他の人に財産を与える効力が生じるという意味ではこの2つは同じような制度に見えるのですが、2つの制度には主に下記のような相違点・共通点があります。

(1)性質(相違点)

死因贈与は贈与者と受贈者(贈与を受ける方)との契約(契約による贈与)であるのに対し、遺贈は遺言者の単独行為(遺言による贈与)で行われます。

(2)方式(相違点)

(1)の性質の違いから、死因贈与に方式の制限はありません(口頭でも可)が、遺贈は一定の方式に従った遺言書をもって行う必要があります。

※死因贈与についても、その内容と効力を明確にするため、公正証書などの書面をもって行うことをお勧めします。

(3)撤回(共通点)

死因贈与は贈与者と受贈者との契約で行われますが、贈与者が自由に撤回できる(※)とするのが判例の見解であり、遺贈についても遺言者はいつでも遺言の方式に従ってその遺言の全部又は一部を撤回することができるとされております。

※負担付死因贈与で受贈者が既にその負担を履行済みの場合を除きます。

(4)死因贈与の場合の受贈者・遺贈の場合の受遺者の権利の保全(相違点)

死因贈与の対象が不動産の場合、受贈者はその契約に基づいて、贈与者の死亡を始期とする所有権移転仮登記をすることができますので、後日対象不動産について権利を取得・設定した第三者がいた場合でもその権利を対抗することができます。
これに対し、受遺者は遺贈を原因とする仮登記をすることは認められておりません。遺贈は遺言者の単独行為であり、遺言者がいつでも撤回することができるものですから、受遺者の権利を保全する必要性がないのがその理由です。

※(3)のとおり、死因贈与の場合も贈与者が自由に撤回することができる(一定の場合を除く)とされておりますので、受贈者に仮登記を認める必要はないのでは?と思われる方がいるかもしれませんが、(1)で記載したとおり、死因贈与は契約ですので、たとえ贈与者が自由に撤回することができるとはいっても、受贈者側にも自分の権利を保全する方法が認められているのです。

(5)税金(共通点)

死因贈与は贈与という名称がついていますが、税金の計算に際しては贈与税ではなく相続税が課税されることになっております。

(6)その他(相違点)

死因贈与は契約ですから、贈与することを受贈者に知らせて行うものであるのに対し、遺贈は単独行為ですから、遺贈することを受遺者に知らせなくても行うことができます。

親が子(長男)に「自分が死んだら家をあなたにあげる。」と望むケースの場合、親は遺言書に「長男に家を相続させる。」と記載してそれを実現することもできますし、長男との間で死因贈与契約を結んでそれを実現することも可能ですが、上記の相違点を理解して、具体的事案に適した方法を選択することが必要になります。
このようなご相談についても当事務所までお気軽にご相談ください!

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