包括遺贈?特定遺贈?

先日こんな内容の遺言書についてご相談を受けました。

(1)下記不動産を甲に遺贈する。
◯◯区◯◯町・・・の土地
◯◯区◯◯町・・・の建物

(2)(1)の不動産を除く一切の財産を乙に遺贈する。

(2)の遺贈は包括遺贈なのか特定遺贈なのか少し悩んでしまいました。

そもそも「包括遺贈」とは、目的物を特定せずに、遺産の全部又はその一定の割合を指定して行う遺贈のことで、例えば「遺産の全部」とか、「遺産の2分の1」というように遺産の割合をもって行う遺贈のこと。
これに対し「特定遺贈」とは、「下記不動産」とか「下記預貯金」というように目的物を特定して行う遺贈のことをいうとされています。

包括遺贈を受けた人(=包括受遺者)は、相続人と同一の権利義務を有する(民法第990条)。とされているため、その遺贈が「包括遺贈」なのか「特定遺贈」なのかによって、債務を承継するか否か、放棄する場合の方式、登記の方法(乙が唯一の相続人だった場合)などの取り扱いが異なりますので慎重に判断しなければなりません。

前記の遺言書(2)の記載は「◯◯を除く」という書き方で財産を特定しているようでもありますが、通常の特定遺贈のように明確に財産を特定している訳ではないので、「特定遺贈」というには少し違和感を感じます。
また、遺産の全部若しくはその一定の割合をしている訳でもないので、「包括遺贈」と言い切ってしまっていいのか?と・・・。

これに類似した事例の判例(東京地判平成10年6月26日判時1668号49頁)を見付けたところ、その解説では、「相続財産の一部を特定遺贈又は分割方法の指定により特定人に取得させることとしたうえ、それらの財産を除く相続財産につき、積極財産のみならず消極財産を包括して遺贈の対象とすることも可能であり、このような遺言は「財産の一部」についての遺贈であるが、当該財産の範囲で、受遺者は被相続人の権利、義務を包括的に承継することになるから、「特定財産を除く相続財産全部」という形で範囲を示された財産の遺贈であっても、それが積極・消極財産を包括して承継させる趣旨のものであるときは、相続分に対応すべき割合が明示されていないとしても、包括遺贈に該当すると解するのが相当である。」といっています。

ところで、登記手続上は遺言書に「相続させる。」と書いてあれば「相続」として登記し、「遺贈する。」と書いてあれば「遺贈」として登記するのが原則ですが、「相続人全員に対して全財産を遺贈する。」と書かれていた場合は、遺言書に「遺贈する。」と記載してあっても「遺贈」ではなく「相続」で登記することになっています。

今回の乙は被相続人の唯一の相続人だったため、これが包括遺贈だとすると「相続」で登記することになりますので、これを法務局がどう判断するか管轄の法務局に相談に行ってきたところ、包括遺贈と解して手続を行って構わないとのことでした。

相続関連の業務は割と頻繁に扱っているのですが、勉強しなければならないことはつきません。

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