遺産分割協議書が使えない?

先日こんなご相談を受けました。

10年前に父が死亡し母と私と弟で遺産分割協議を行いました。
両親の自宅だった不動産は母が相続し、預貯金は法定相続分で分割するという内容で協議が成立し、預貯金はすぐに解約手続を行ったのですが、不動産は母が住んでおり処分する予定もなかったので相続登記はせずにいたところ、先日母が亡くなり弟と2人で遺産分割協議を行い私が不動産を相続することになりました。

インターネットで調べたところ、まだ父名義になっている不動産の相続登記をするためには父が亡くなったときの遺産分割協議書と母が亡くなったときの遺産分割協議書、また、それぞれの協議書に押印した印鑑についての印鑑証明書が必要だということが分かったのですが、母は既に亡くなってしまって印鑑証明書を取ることができません。どうしたらいいでしょうか・・・。

時々このような事例はあるのですが、実務上は、このような場合、亡くなって印鑑証明書を取得出来ない方の相続人全員から、当該遺産分割協議が真正に成立したことの上申書(相続人の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要)を添付すれば登記は滞りなく受理されます。

似たようなケースで、遺産分割協議は既に成立したものの、その後に一部の相続人が改印して以前の印鑑証明書を添付することができないという場合はどうでしょうか?

遺産分割協議書の古い実印の横に現在使用している実印を押して現在の印鑑証明書を添付すれば手続上は登記は受理されるでしょうし、そのように書いてある記事もネット上で見かけます。

ですが遺産分割協議成立時点では無かったはずの実印をあたかもあったかのようにして手続を行うことに大変違和感を感じます。(追認しているのと同じことだから問題ない。というご意見もあると思いますが・・・。)

このような場合にも、遺産分割協議当事者全員が、その遺産分割協議が真正に成立したことの上申書を添付すれば登記は受理されるものと思われます。

※「思われます。」と書いたのは、当初上申書での手続について念のため管轄法務局に相談(確認)に行ったところ、前段の方法(古い実印の横に新しい実印を押す)を取るように指導されてしまった経緯がありました。
上申書を使った方法があるにも関わらずそのような方法を取らなければならないのはおかしいのでは?と再度相談した結果、上申書での手続が受理されましたので、ご自身で手続を行う場合は念のため管轄法務局にご相談されてから進めて頂いた方がよろしいかと思います。

上記上申書には遺産分割協議当事者全員の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要になるのですが、それだったら、もう一度遺産分割協議書を作り直せばいいのでは?と思われる方がいるかもしれませんね。

もちろん遺産分割協議書を作り直しても手続上は問題ありません。
ですが「遺産分割協議は有効に成立しているが手続上書類(上申書)を追加する必要がある。」ことと、「遺産分割協議書が使えないから遺産分割協議をやり直す。」ことには大きな違いがあり、後者の方法だと遺産分割協議に不満を持っていた相続人が手続に協力してくれないということが起こってしまうかもしれません。

今回ご依頼頂いた件は、相続人のうちお一人が亡くなっており、別のお一人が改印されていたため、2種類の上申書を添付して無事に登記が完了したのですが、やはり時間が経過すると何が起こるか分かりませんので、遺産分割協議が成立したら預貯金の解約だけでなく、不動産の名義変更等の手続もすみやかに済ませておくことをお勧め致します。

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